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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

15 ジンクスその4「ブルーレター」

なぜ、と問われても、説明できないことがある。

意味もなく、行動してしまうことがある。

それが恋なのだと、唇の熱で知った。







「みなとくん」
廊下でその声を聴いた瞬間、健としては身構えた。
またあの、わけのわからないハイテンション生徒会長が、一気に何か捲したてた挙句に健や幸也
がなぞの八つ当たりをされ、暴力を振るわれたわけじゃないのに精神的にいろいろ抉られてしんどい・・・そこまですべて想定できて、うんざり気味に振り返って、息をのんだ。
穏やかで、理知的な微笑を浮かべ、そこに佇んでいるイケメンは・・・・誰だ!?
「こんにちは、上条先輩」
さらに、声が冷たくないみなとの返事に、健は二人の顔を何往復もして見比べてしまった。
目の前で起きている現象が、わけわからん。
「今日の放課後は、時間をもらえるかい?」
「はい、生徒会室にお邪魔しても?」
「いや、君の教室に迎えに行ってもいいかい?」
「・・・?はい」
そこで言葉を区切って、上条はみなとを見つめる。
みなとも、静かに見つめ返す。
「あこがれていたんだ。君を教室に迎えに行くのをね」
「変なこだわりですね?」
そう言いつつも、わかりました、と、ふんわり笑うみなとの柔らかな空気に、健だけでもなく幸也も面食らったらしい。
無言でみなとの横顔を見ていた。
あたたかな空気とは裏腹にあっさり別れる二人。
「・・・なぁ、お前たちって」
「え?何?」
とぼけているのではなく、本気で、急にどうしたのさという風にみなとが聞き返してくるものだから、健は何も言えなくなった。
空気が、何か、変わっていることはわかった。
でもそれがどういうことか、
それ以上は何も聞けなかった。
みなとの態度が、とても自然すぎたからだろう。


「みなとくん」
約束は果たされる。
放課後、下級生の教室に現れた上条は、穏やかに、けれども幸せを確信させる笑みで迎えに参じた。
まだ生徒がまばらに残っている教室、みなとはそれを自然であるかのように応じて、それはまるで演劇のワンシーンで見るような、王子様がお姫様を迎えに来たかのような、誰にも触れないキラキラした空間だったと、居合わせた者たちはもそもそと後に語る。
ナチュラルなエスコートに、みなとが子供のように微笑み、差し出された手に手を重ねたのを見て、誰もが彼らの幸福を疑わなかったという。
二人は、とりとめもない会話をしながら、ことさらべたべたと触れ合うわけではなく、ふんわりと、当たり前のように隣を歩いていた。
やがて裏庭の小さなベンチを見つけると、並んで夕日を探してみたりする。

なぜ、なんて、二人にもわからない。
理由を探せば、それらしい言葉は出てくるかもしれない。

「上条先輩は、触れないんですね」
みなとの言葉に、少しだけ面食らった上条が、オロオロと言葉を探す。
「いや、その。触れたいんだ、本当は」
静かに、でも決然とそこは伝える。
「けれど、どうしても、怖いと思ってしまう」
「・・・そういう行為が?それとも、僕の過去が?」
じっと見つめる大きな目はどこまでも澄んでいて、上条はふと微笑む。
「一度越えてしまったら、きっと、離れられなくなってしまう。醜く、君を傷つけるだろう。そんな風に愛しみたいわけじゃないんだ」
だから、あの青い紙を破り捨てた。
「そのことも聞いてみたかったんです」
「私も、君には聞きたいことがたくさんあるな・・・」
「・・・・。」
じゃあ。
そんな風に、会話のついでのようにみなとが立ち上がる。
差し出された手に、上条は一瞬ためらいを見せ、それでもみなとの笑みに励まされるように掌を重ねた。
もう、耐えることも我慢することもない。
二人はそういったことを許せる間柄になったのだから。
「来て、先輩。秘密の場所を教えてあげる」
みなとは無垢そのものの笑みで誘い、裏庭のさらに奥へといざなった。

「こんな場所、あったのか」
廃屋にも似た温室は、存在を忘れられたかのようにたたずみ、しかし手入れをされていないのは外側の器だけで、中にはむせ返るほどの濃密な香りを放つ紫の花が咲いていた。
上条は花の名を知らない。
「生徒会室のマップにも載ってませんしね」
「あれは建物に特化し」
てるから、という文字は、唇で奪われる。
「・・・人が見たら、どうするんだ?」
「今まであれほど人前で恥ずかしいこと言ってたのに、今更へんなところこだわりますね」
みなとは笑って取り合わない。
指先だけを差しいれて、ゆるく上条のタイゆるめた。
「・・・今までは、変に思われるのは私だけだったから。でも、今はみなとくんも巻き込んでしまう」
「・・・ねえ、もういいから」
黙って。
再び唇を与える。
上条はやはり少しだけためらって、それから当たり前のように自らの上着を脱いだ。
「・・・誰も来ないことを祈るよ」
その上着を、温室のやわらかな土の上に敷く。
みなとをその上に導きながら、甘い声で囁いた。
「君のきれいな肌を、もう私以外に見せたくないからね」
「・・・・・・・ふふ」
くすぐったい、と、みなとは思う。
しぐさではなくて言葉そのものが、みなとの胸の触れたところもないところに熱を運ぶ。
それがこんなにもくすぐったいなんて、知らなかった。
「あーあ、僕の計画では『不慣れな先輩』を、導いてあげる予定だったのになぁ」
「なんだいそれ」
あんな場面を見ておいて、知らないふりをしているわけではないだろうに、上条は受け流す。
許す、というと大げさかもしれない。
知っていて、それを頓着せずに受け流す、そういう許し方もあるのだと、みなとは初めて彼から学んだ。
「初めてだから、何も知らないんだ。・・・どこに触れたら、喜ぶ?」
蠱惑的な笑みに、確信犯のずるさを見る。
上条のそんな表情を知らなかったのは、みなとも同じ。
そして、もっとこのひとを知りたいと思った。
「・・・ここと」
自らの首筋、耳の少しうしろに人差し指をそえた。
ちゅ、とそこに水音を落とされ、ああ、と、身体の芯が震えた。
「ここと」
あごの少し下。
そこにも熱を押し付けられ、さらに呼吸が深くなる。
「・・・他には?」
少しだけ余裕のなくなった上条の声が嬉しくて、少し切なくなる。
早くもっと深く触れてほしいのに、いつまでもこうやって甘やかされていたい。
この行為が、所有の押し付けではなく、好きな人の熱を測るような、どこかやさしいものに思えて、意味もなく涙が出そうになった。
「教えてくれるかい?」
「・・あとは、わかんない」
わざと子供のようなそっけない言い方をして、目の前の恋人を試す。
「あとは、先輩が、探して」

水音だけが、温室に降りそそがれた。




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