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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

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No number 02

その人のすべてが知りたいとは思わない。

でも、その人が秘めていることは、なぜか知りたい。
それが重いものならなおさら、一人で持たせたくないのだ。





あっけなかった。
妙な空気に緊張していたのは、まるで隼人一人だけだったかのように、二人はあっさり別れていった。
秀也はそれ以上何も語らずゆっくりあきらの横を通り過ぎ、あきらもそれを見送ろうとはしなかった。
けれど、何もなかったはずはない。
あの空気は、絶対におかしい。

なぜなら。

「・・・隼人」
あきらが振り返らずに口をひらいた。
「ごめん、今日はやっぱり早めに家に帰っていいかな」
胸がいっぱいになっちゃって、という、なぞの説明が添えられた。
用事を思い出したでも、具合が悪くなったでも、この世に言い訳はゴマンとあるのに、変なところであきらは嘘をつかない。
それが余計に、チクリと胸を刺した。
久しぶりに、おそらく本当に久しぶりにおさななじみに再会したことが、自分との約束よりもはるかにあきらの心を占める。
その事実が、妙に心を冷たくする。
入り込めない壁を突き付けられ、隼人にできることは、精いっぱい何でもない風を装うことだけだった。


相手の名前は知っていた。
顔も。
あきらのおさななじみで、確か家も近かったようなことを、クラスメイトのだれかから聞いた。
だが記憶の中のあきらは、不自然なほど彼の名前を口にせず、二人が一緒のところもそれほど見た記憶がない。
一年の最初のころは、よく一緒につるんでいたようなことを、クラスメイトからのまた聞きで聞いていたが、実際にその光景を目にしたことはなく、興味もなかったので捨て置いた。その程度の存在だった。

でも。

あの空気が妙につっかえる。のどを圧迫する苦しい感じが、飲み込もうとしてもそれを許してくれない。

あきらは、何かを隠している。

――――自分の知らない、あきらがいる。


こんな風にあきらへの壁を感じるのは、二度目だった。



あきらの名前を呼んで、それから駆け寄る癖がついたのは、それこそ高校1年の夏以降だった。
はたから見ていると無防備にもほどがあるあきらだったが、ある時を境に、妙に過敏な気配を見せたのだ。
――――人間にひどいことされたノラ猫みてぇ。
そんな風に揶揄したが、それに対してあきらはあいまいに笑ってきた。
らしくもないその表情が、妙に引っかかった。
触らせてくれない。
その隠された心が寂しくていじけたのも、今となっては苦い思い出だ。
ある日突然、人とのいきなりの接触におびえ、ふいに肩を叩こうものなら、びくりと全身に力が入るさまが、制服の布を通して掌に伝わるほどだった。
例えるなら、嫌悪、が近かっただろうか。
無言の反射的な拒絶を肌で感じ、突っ込もうにも突っ込めなかったのを覚えている。
いったい何があったのか、悩みがあるなら聞くのに。
そんな隼人の気持ちを、やんわりとした笑みが拒否する。
さわれない。
さわらせてくれない。
じれったくて、焦るようなこの感情が何なのか、あの頃の自分には答えが出せなかった。
結局いまも、変わらない。
だが絶対に、あいつは何かを知っている。

小金井秀也。

あきらの心に、近い人間の名前。



「ああ、今度の学園祭で対抗試合すんだよ」
翌日、校内で見かけたバスケ部の知り合いに聞くと、昨日の一団は来月に控えた学園祭の対抗試合に出る、他県の大学だという。
監督が以前両校を兼務していたとかで、親善試合のようなものらしい。
「へー」
だからか。
いろいろなことに整理がつく。
「前から交流ってあったんか?」
「そうだなー。夏合宿も一緒だったし」
初耳だ。
「どした?バスケに興味でたんか?」
「いや」
即答である。
関心があるのはそこじゃない。
バスケが、というよりも。
あの大学のバスケ部に、あいつがいて。
この大学に、縁があるということが、はっきり言って。
「なんかむかつく」
「なんでだよ」
驚いたように突っ込まれ、その突っ込みに心のどこかで冷静な自分が「確かに」と同意してしまうから変な話だ。
別に、古い知り合いが、学校同士の交流で出入りしているだけで、なんでこんなに心が狭い気分を味あわなければならないのか。
むしろ肩をたたいて「どうしてたんだよ!久しぶり!」とでも言えばよかった。あっけらかんと、ただ再会を驚いて喜んでいればいいだけだ。
けれど、あきらはそれをしなかった。
それを、しなかったのだ。
「学園祭が楽しみだわ」
そう改めて口にすると、隣で聞いていたバスケ部の友人が半笑いで、 お前さっきから人と会話する気あるんか、意味わからん と苦言を呈してきて、確かに、とまた心の中の冷静な自分が心で返事をする。

あきらは教えてくれないだろう。
何があったのか、あの空気は何なのか、どうして自分を近づけてくれないのか。
人との接触におびえ、何でもないというように無理して笑うのはなぜなのか。

それを暴きたいわけではないのだ。
あきらが自分から話してくれないのなら、意味がない。

でも、他人から聞くのはまた別だ。
あきらを無傷のまま、理解したい。
それだけで意味など十分だ。


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