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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

07また一緒にいられるということ


「あきらを、誰とも共有したくない」


それが、秀也の言葉だった。

二人でゆっくりと歩く帰り道、ずっと顔を伏せたままだった幼なじみは、ぼそぼそと気持ちを語り始める。
長い間話せなかったことを埋めるように、大切な気持ちが言葉となってこぼれていく。


中学生の時、秀也には彼女がいた。
それを、あきらは確かに寂しいと思った。
自分を必要としない世界を新しく広げていく幼なじみに、置いて行かれたような、忘れられたような、奇妙な寂しさが確かにあったのだ。
けれどそれは、仲のいい友達を持つ人間なら、誰にだって心当たりがある感情だろう。
独占欲とも、少し違う。
あきらは、秀也と彼女に遠慮をし、すこし距離を取るようにしていた。
秀也は確かにかっこいいし、不器用だけれどとても優しい。
女子にもてるのは良くわかる。
そんな幼なじみを、ちょっと自慢に思っていた。

そう、秀也は女子と付き合っていたのだ。
だから、実は同性としか恋ができない、ということではないはずだ。
そのところに触れていいのか迷っている帰り道、聞きたかったことを自分から話してくれる秀也の言葉は、ありがたかった。
「あきらが男だとか、そんなの理由にならない。もしあきらが女でも、きっと気持ちは変わらない。あきらでなくちゃ、意味がなかった」
「・・・・。」
どう返事をしていいのか分からず、微妙な顔をしていたのだろう。
秀也が振り返る。
目が合う。
「本当に、どうしていいのかわからないくらい、好きなんだ」

ときどき、全部奪いたくなるくらい。

そう、かすれた声は想いを告げる。

その言葉の意味は、もう十分すぎるほどあきらには伝わった。
「一緒に考えよう。だから、お願い。もう、あんな乱暴はしないで」
先日の、荒々しい所作は決して忘れられない。
「・・・・・・・・・・・・触れては、だめか?」
どちらが乱暴を受けたのかわからないくらい、見つめてくる秀也の表情は途方に暮れた幼い子供のようで、あきらは肩の力がぬけてしまう。
こういう表情は、昔からかわらない。
どんなに背が伸びても、声が低くなっても、秀也は記憶の秀也のままだ。
そしてそんな大好きな幼なじみを、悲しませたくない。
「許可、とってからなら。いいよ」
精いっぱいの譲歩だ。
その言葉に、秀也はあどけなく笑う。
「じゃあ、いま、・・・手に触れてもいいか?」
「・・・・・・手、だけなら」
そう言って右手を差し出すと、秀也の指が恐る恐るのばされる。
そしてその節くれだった指があきらの指先を少しつかむと、小さなため息とともに離れていく。
「・・・・・・・・・嬉しくて、変になりそうだから、いい」
指くらいで、とあきらは思う。
二人が本当に小さな子供だった頃、こんな程度の触れ合いはしょっちゅうだった。
でも今は、熱が触れるだけで別の意味に代わってしまう。
改めて思うと、胸の奥が痛んだ。
かすかに触れただけの指先までもが、じんと痛むような気がした。


「お、あきら今帰りか」
夏休みを直前に控えた夕暮れ、渡り廊下に差しかかったあきらを呼びとめたのは、マウンテンバイクにまたがろうとする水守だった。
校舎の奥にある自転車置き場は、チャリ通学の生徒たちがひっきりなしに出入りしている。
あきらは徒歩通学なので、こうして下駄箱に行く際に近くを通りかかる程度だ。
そういえば、この水守のマウンテンバイクが玄関先に止まっていたことも、きっかけの一つだったのかもしれない。
あくまできっかけの一つ、だけれども。
「うん。サッカー部は?」
「明日の試合にそなえて休んどけって」
水守は1年の中でたった一人のレギュラーに選抜されたと、クラスメイトから聞いていた。
本来ならやっかまれそうなものを、従来の人懐っこさで怨みを買わないところが水守らしい。
「美術部ないなら、後ろ乗ってくか?」
「え、でもマウンテンバイクって二人乗りには適してないような・・・」
あきらの疑問に、得意げな笑顔が答える。
「ンなの部品取り付ければ簡単。ねじ式の足場があるんだよ」
背負った通学用のリュックから、太い大きなねじのような部品をのぞかせる。
どうやら取り付けが自由らしい。
「ありがとう。でも、本屋とか寄ってくからいい」
「あー・・・そっか。ま、気をつけて帰れよ?」
「うん」
気兼ねない男友達が少ないあきらにとって、水守の明るさには時々救われる。
秀也のことで落ち込んでいた時も、さりげなく、押し付けることなく元気づけてくれた。
ああ、いい友達ができたな。
素直にそう思えた。
「あ、そだ。・・・あき」
「!」
最後につけくわえられた呼び名は、内緒にしてくれと頼んだはずのもので、あきらは羞恥で顔が熱くなった。
「ちょ、やめてってば!」
「へへ、呼んでみただけだよ。皆には言ってねーから、安心しな」
明らかに、確信犯だったようだ。
こういういたずらっ子のような面も、最近では慣れてきた。
「もー・・・絶対呼ばないでよ」
「わぁってるって。たまにしか、つかわねーよ」
「それ分かってるって言わない!」
下らない会話のやり取りをし、じゃあ、と、別れ際の空気になった時。
ひらりと自転車にまたがる背中に、ふと、ありがとうが言いたくなった。

そういえば。

いつの間にか自分のことをあきら、と呼んで親愛を示してくれているのに、不思議と水守は自身の呼び方をそれにあわせろとは言ってこなかった。
名前を呼び捨てなのと、苗字を呼ぶのとでは、気持ち的に全然ちがうのに、それに対して絶対に押し付けてくることをしない。
初対面でこそ、なんだかすごく我が強そうだな、という印象を持ったのだが、考えてみれば水守はいつでも自分を押し付けたりしない。
大人なんだろうな、と思う。
はたから見れば随分と落ち込んで見えただろうあきらに、決して必要以上に踏み込んだりしなかった。
でもそれは、冷たいからじゃないことを、この数ヶ月一緒に過ごして理解した。
「んじゃあきら、いい週末をなー!」
「うん」
水守がペダルに片足を乗せようとした瞬間、すこしためらって付け加えてみる。
「・・・はやと、もね」
「!!!!」

ぐしゃ、ガラドシャアアア

派手な土煙をあげ、みごとに自転車ごとすっころぶクラスメイトに、あきらは固まってしまった。
「なに、大丈夫・・・?」
後ろから一部始終を見ていた身としては、立ち漕ぎをしようとした瞬間、思いっきりバランスを崩して地面にたたきつけられた間抜けな少年、という図に、少しだけ笑いそうになる。
けれど、いってえ、と打ちつけたらしき腰をさすりながら、こちらを振り返った彼は、耳の後ろまで真っ赤になっていた。
痛かったのかな、と可哀そうに思っていると、涙目による精いっぱいの抗議が始まった。
「てっめ、卑怯だぞ!仕返しか!」
「・・・・・・え、何が?」
本気できょとんとするあきら。
「くっそー!お前のこと次から、あき、で決定な!!!」
とんでもない捨て台詞と共に、よろよろと自転車にまたがりなおす水守に、え、ちょっと、なんでそうなるのさ、というあきらの抗議は届かなかったようだ。


週が明けて月曜になると、半袖の肘を絆創膏だらけにした水守隼人に、「よう、あき!」と意地の悪い第一声で迎えられてしまった。

心のどこかで、ああ、こんなこと知ったら、また秀也の機嫌が悪くなるのかなぁ・・・と考え、『あき』という名称が恥ずかしいと考えるよりも先に秀也を思い浮かべた自分に、かすかにとまどう。

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