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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

16 ・・・だいすき、しか、言えない

それからが、大変だった。

光輝はなぜか、「そうなる」前よりも、「そうなった」後のほうが・・・


・・・恥ずかしがった。







あれだけうんざりするほど好きだ好きだと言っていたくせに、翌朝の光輝は不可解と言うよりほかない。
寝起きが悪いのかと顔を覗き込もうとすると、かたくなに上掛けを引きよせ、顔を見せまいとするのだ。

恥ずかしくて、顔が合わせられないということらしい。

いい加減にしろ、と布団を引っぱがそうと近寄った瞬間、今度はいきなりむこうからこちらを振り仰いできた。
そして次の瞬間には、
「同じ、せっけんの匂いだっ」
わけのわからない台詞とともに抱きつかれる。
「・・・。」
昨夜、少々、いやかなり身を清めなければならない事態になったため、珍しく朝からシャワーを浴びてきた結果、光輝の言うところの 同じせっけんの匂い とやらになったのだろう。
抱きしめられ、耳の後ろをすん、とかがれる。
「離れろ」
「・・・あ」
その一言で、我に返ったらしい。
身を離すと、気まずそうに、というか ああこれがもじもじするってやつだな・・・とお手本を見るような気分になる姿を見せられ、毒気が抜かれてしまった。
木戸としては、もう逃げも隠れもする気はないし、こうなった以上言い訳をする気もなかったのだが、当の光輝はそうもいかないようだ。

もちろん、気まずいのは木戸だって同じだ。
朝食のテーブルで初めて息子が友人を泊めていたらしいと知る父に、光輝ははにかみながら挨拶をしていたが、そのはにかみの内訳については、一生知られたくないな・・・と木戸は天井を仰ぐ。
母は朝から上機嫌でふわふわのオムレツを作り、なぜか光輝の分だけケチャップでハートを描く、という、昭和的なサービスをしているのを見るにあたり、めまいがしそうだった。
またそれについて光輝が「お店のオムレツみたい!」とはしゃいで見せるものだから、母の機嫌はますます上々。
またいつでも遊びにいらっしゃい、とまでお墨付きをもらい、やっとの登校である。


「・・・なんでそんなもじもじしてるんだ」
バス停へ向かう途中、木戸がうんざりと声をかけると、その数歩後ろに身を縮こまらせてついてきながら、光輝は消え入りそうな声で白状をする。
「だって、きのう、あんなことしちゃたなって思った・・・ら・・・」
語尾はごにょごにょとして聞き取れない。
あんなこと、というが、どちらかと言うとされたのは木戸の方だ。
寝汗をかいたから、と、母には説明しながらシーツを朝いちばんに洗濯機に突っこんで証拠隠滅をはかったり、木戸は朝から気ぜわしかったので、そんな情緒に浸っているゆとりはない。
しかも、身体が、ものすごく、だるい。
誰のせいだと思っているんだか。
「そうやってこれからもずっともじもじ離れてる気か」
「・・・っ」
それは嫌です、とばかりに、小走りに距離を縮めて並んで歩きだす光輝を、少々複雑な思いで見る。
「そういえば、どうして俺がウチの高校にいるって知ってたんだ?」
「え?」
「知ってたから、追いかけて入学してきたんだろ。入学式の時の様子だと」
初めて出会った瞬間から、真正面に好きと言われた記憶。
遠い昔のようで、じつは季節一つ分しか過ぎていない。
「あー・・・例の、第三病院で」
それは木戸が幼い時に入院していた病院であり、この地域で一番大きい総合病院でもあった。
「オレが病気で受診に行ったときに、偶然、制服姿のきどさんを見つけたんです」
たしかに、定期的に病院に通って入る。
大手術から10年以上は経ったが、それでも諸々の経過観察というものは続いている。
年に1、2回は通院しているが、そのタイミングで一方的な再会を果たされていたらしい。
あわてて追いかけたが、その時は声をかけることができなかったのだという。
遠目にでもこの制服を見れば、地元の人間ならどこの高校かくらいわかる。
「めちゃくちゃ進学校だったから、受験するの大変でした」
可能性に賭けて、やっとの思いで果たせた再会が、入学式のあれであるという。
そこから、ほぼ毎日。
飽きもせずに好きだと言い続け、けれどそれは恋ではないというからまた話がややこしくなり、北島のことが引き金で・・・と、情報を整理していたそこで思い至る。
北島には、なんと説明しよう。
まさに昨日の今日だ。
身体こそつながらなかったが、相当きわどいことを、友人としてなら絶対にしないようなことを、してしまった。
加えて、頼むからもう光輝と関わるなと釘をさされた。
どの面を下げて、勢いでそんな感じになっちゃいました・・・と言えるのだろう。

考えてみたら。

光輝と目が合った瞬間、恥ずかしそうに顔をそむけられてしまった。
いやいやおかしいだろお前、と内心突っ込みを入れたくなる。

自分は、光輝が好きなのだろうか。

恋愛感情かと問われると、どこか微妙にかけ離れているように思える。
もしこれが友情だったら、そんなほのぼのとした感情だったら、はじめから悩んだりしなかったと北島は言った。
そういう葛藤は、自分の中にはない。
しいて言うなら、昨夜の光輝が苦しそうにささやいた「もうどうなってもいい」という言葉が、木戸にとっても同じ気持ちに近い。
名前を呼んだだけで、達してしまうほど、ずっと焦がれられていた。
そんな光輝に戸惑ったものの、今では慣れてしまったのか、こうして隣にいるのが当たり前のような錯覚を覚える。

とりあえず、どうする。
バス停にたどり着き、歩を止めると、光輝もそれに倣った。
付き合う、のだろうか。
一線を越えておいて、今日から普通の先輩後輩に戻ります、とはいかない。
今日は午前中だけで学校は終わりだ。
夏休みがこれほどまでにありがたいとは、制服を着る学生の身として最後の夏休みをかみしめる二度と忘れられない思い出となるだろう。

とりあえず、北島には昨日のことを謝って、それから・・・光輝のことは何と説明しよう。
もうすこし時間がたってから、夏休みが明けたら、いつかは言わなければならないだろう。でもそれは今日でなくてもいいはずだ。
そんなことを思いながらバスを待っている間、光輝はずっと無言でうつむいて、耳がほんのり赤くなっているのを見下ろしながら、こっちもいつかははっきり言葉でどうするか話し合わなくてはいけないにしろ、でもそれは今日でなくてもいいはずだ。
そう結論づけて、学校に向かうバスを迎えた。

すでに何人か同じ制服の姿が目立つ車内で、光輝が無言なのはありがたかった。
うかつなことは話せない。

と、木戸のスマホが振動し、何らかのメッセージが届いたことを告げる。
ポケットを探って確認をすると、光輝からのLINEだった。
となりを見れば、相変わらず無言でうつむいていると思ったら、スマホを操作している。
となりにいるのに、LINEか。
指を滑らせ、メッセージを読む。


――――― 夏休み、一日遊びにつきあってくれるって約束、有効ですか。


ああ、北島とキスした償いだっけか?
連絡先を交換させられた際に、そんなことを言っていた。

直接口で言えばいいのに。
あれだけいろいろ言っておいて、本当に今更。


――――― いいよ。どこに行きたい?

返事は、一瞬で返ってきた。


―――――― また、おうちに泊まらせてください


「・・・却下」
「ええっ!!」
直接口頭で返事をすると、これまたすぐに絶望の悲鳴が隣で上がり、乗客たちの視線を集めてしまう結果になった。








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