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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

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11すべてを包み込んで/R18

「雨が降りそうだな」
ぽつりと、秀也がつぶやいた。
振り仰いだあきらは、ただその背の高い横顔を見る。
何度も何度も一緒にたどった帰り道。
何も変わらないこの道で、変化したのは二人の関係だった。

あれから、恥じらうあきらを何度も説きふせて、秀也は触れることを望んだ。
あきらも拒まなかった。
進んで触れたいわけではなかったが、かといって嫌悪感もなかった・・・あいまいなその気持ちを、あきらはうまく説明できない。

ただ、あきらにふれた秀也が、あまりにも幸せそうに笑うので、その表情をもっと見ていたくなったのだ。
あきらの熱にふれ、うっとりと目を閉じる秀也の切なげな眉が好きだった。
思わずもれる吐息すら、万感の思いが込められているようで、くすぐったかった。
あきらが応えると、秀也の理性はいつも擦り切れる。
がむしゃらに求め、むさぼり、熱を一つにしようとする。
けれど、あきらの体は、本当の意味でそれに応えることはできなかった。

秀也。

苦しい息の上でそう呼ぶと、秀也は切なげに目を閉じる。
そして、あきらの素肌の上で、爆ぜた。
どろっとした熱が絶え間なくぬくもりを伝えてくるたびに、あきらは申し訳ない気持ちになった。
秀也が求めていることが分かるのに、応えられない己の体が、いっそう虚しい。
「ん・・・やぁ・・・ぁっぁあ・・・ん」
くちゅ、じゅ、と水音は激しさを増し、敏感になったあきらの肌が朱に色づいても、熱は最後まで高まらない。
感じていないわけではないのだが、執拗に高められ、すすり泣いて許しを請うても、秀也は離してくれない。
熱と熱でこすりあげられ、時に身を焼く痛みに悲鳴を上げた。
「ああああ・・・んっ!」
強く吸われ、血がそこに集まるのが分かる。
けれど、あきらは高みに行けなかった。
秀也にも伝わったのだろう。
秀也ばかりが果てた後、物も言わずに抱きしめられる。
吐かれた熱が肌をすべる感触が怖くて、その生々しさが恐ろしくて、あきらは声を殺して泣く。
耳に届かないその声を、秀也は感じ取るのだろうか。
あきら、と何度も名を呼ばれ、シーツと背の隙間に指を差し入れられるたび、ごめんねという言葉がせりあがってくる。
こんなに求めてくれている、それに応えたい。
けれど、あきらにとって、どんなに愛しくても秀也は秀也なのだ。
秀也を悲しませたくない、苦しませたくない、寂しい思いをさせたくない…必死に沿わせようとすればするほど、心の沿わせ方が違うのだと思い知った。
「秀也ぁ・・・」
敏感な場所に何度も口づけを受け、あり得ない場所に指が差し入れられた。
「あっ・・・あっ・・・や・・・・あああっ」
本当は、秀也がそこに熱を注ぎたがっていることは分かっていた。
けれど、指1本でこんなにも苦しさと痛みを伴うのだ。
何度もふれ、唇に受けた秀也の「それ」は、信じられないほどの質感をしていた。
とても、ここでは受けられない。
「んん・・・ひゃうっ・・・」
色気のない声が出てしまった。
用意されたローションをたっぷりと含んだ秀也の指は、もうあきらの弱いところを知り尽くしていた。
逃げようと腰を動かせば、秀也の張りつめた熱に自身がふれる。
怖くなって身を引けば、うごめく指が何度もあきらの熱を煽る。
「・・・っ・・・んんぁ・・・・っあ・・・・」
苦しい。
快感を何度も呼び覚まされ、体の芯が熱で潤むようにゆれる。
けれど、秀也がそこに本当の意味で触れようとはしない。
熱を注ごうとしない。
その理由があきらには分かってしまう。

好きだ。秀也が好きだ。大好きだ。
ずっと一緒にいたい、悲しませたくない、望みは何でも叶えてあげたい。
・・・けれど、これは。


ちがうんだ。


「あ・・・あぁぁ・・・・やっ・・・しゅう、や、だめ・・・あああああっ」
指が増やされる。
秀也は優しく、しかし時に激しくあきらをかき乱す。
今日も、3度は吐精された。
だが、全部あきらは肌で受け止める。
決して中では、受け止めない。

いいよ、きて。

その一言が、どうしても、こんなに泣きたいほど思っていても、言えなかった。
言ってあげれば、秀也は喜ぶ。
今までと同じように、二人はこれからも並んで歩ける。
そう分かっているのに、その一言がどうしても言えない。
それが、あきらの無意識の悲鳴なのだ。
くちゅ、とあきらの最も敏感な熱を、今日も強く追い立てられる。
ちゅ、ちゅぷ・・・くちゅり。
「・・・ぁ・・・ん・・・はぁ・・・・ぁっ・・・あああっ」
何度も水音は立てられ、唇で、舌で、時には意地悪で歯を立てられ、添えられた手はじらすように周囲を丹念にたどっていく。
ちゅく、ぐちゅっ・・・
「あああああ・・・・っ」


・・・けれど、決して達せない。

「はぁ・・・はぁ・・・・っ」
もう、ゆるして。
かすれる声であきらが懇願すると、秀也は熱を唇から離した。
ゆっくりとした動きであきらを抱きなおす。
ひたっと密着した肌と、荒い息づかいに合わせて追いあげる体。
何度もしごかれ、口に含まれたあきらの熱は、ひんやりとした外気にさらされる。
抱きなおす間も、あきらの身に差し入れられた秀也の指は、離してくれない。

どれ程そうしていただろう。

ほたっ、と、あきらの頬にしずくが落ちる。
何度も行かされそうになり、苦しい息を整えていたあきらが、うっすらと目をあける。
秀也は、泣いていた。
「しゅう、や・・・?」
はぁ・・・っと、息継ぎの合間に愛しいその名を口に乗せる。
秀也の涙が、止まらないのが不思議だった。
「秀也・・・」
その涙をぬぐおうと伸ばしたあきらの手は、そっと絡め取られ、指先に口づけが添えられた。
「・・・・・・・・・・あきら、好きだ」
「うん・・・」
「好きだ。好きだ」
「・・・・・・うん」
すすり泣くようにあきらを呼び、思いを告げてくる秀也に、何が言えただろう。
どれほど優しくされても、乱暴にされても、秀也を嫌いになれるはずがない。
その気持ちに、嘘は微塵もない。
けれど、あきらがついに吐精することは一度もなかった。
執拗な愛撫を受けても、あきらはその熱を解放できない。
その理由は、あきらをこれほどに求める秀也なら、伝わってしまっただろう。
何度も何度も、呆れるくらいあきらを求めた。
けれど応えてくれない、応えようとあきらが悶えれば悶えるほど、二人の何かが決定的に違うことを思い知らされる。
いつも一緒にいた二人だ。
気付かないはずが、ない。

「あきら・・・・・」
気が遠くなるほど抱きしめられ、名前を耳元で大切に囁かれる。
秀也の涙は、止まらない。
その目を、あきらの澄んだ瞳が見つめ返す。

不思議だ。
やっぱり、ずっと一緒だった分だけ、言葉を介さなくても、互いを理解できる。
秀也は、どれだけ苦しかっただろう。
あきらにはそれが伝わる。
あきらは、どれだけ精いっぱい応えようとしてくれていたか。
秀也にも、それが分かる。
変なところで、幼なじみの重みを知る。
わずかな違いも、見逃してくれない。
好きだからこそ、大切だからこそ、分かってしまう。

「あきら」

秀也の呼び声に、あきらはこっくりと頷いた。
その瞬間、あきらの目からも、涙がこぼれおちた。
音もなく、幾筋もの涙が滑っていった。

「・・・秀也、あげる。全部あげる。一つになろう」

あきらはほほ笑んで告げる。
秀也が、苦痛に顔をゆがませた。

「秀也、怖がらないで。俺の全部をあげるから。だから、もう泣かないで」

きて。

唇だけで、そうつぶやく。
「あきら・・・・っ!」
悲痛な叫びと共に、強くかき抱かれた。

それがどういう意味か、もう分かっていた。


すべてをささげる。あげる。全部君のものだ。
ごめん、君を愛していたけれど、結局、君が一番欲しているものは、頑張ってみたけれど・・・・あげられなかった。


二人は決して、恋人ではなかった。
だからこう呼ぶのは適切か・・・二人にも、もはや分からなかった。

ただ一つ。


それは、恋人で言うならば「別れ」にひとしい選択だったのだ。


こんなに互いを大切にしたいのに、一番肝要なものが、決定的に、どうしても違うのだ。
なのにそれを許すということは、もう駄目だということに近かった。
その最後の誠意として、あきらは秀也に赦した。
生涯誰も触れることのないはずのその一番奥を、最初で最後に、触れる者として受け入れるのだ。
秀也のためらいは、その涙から伝わる。
あきらは優しく微笑み、その時を待った。
どれほど重い沈黙だっただろう。

ゆっくり、指の代わりに差し込まれる熱。

「うっ・・・」
苦しそうにゆがめられたあきらの目から、涙がほろほろとこぼれていく。
先にそそがれ、ぬるまったローションが、二人の隙間から圧力であふれだしていく。
伝うその水の感触が、秀也を深くまで吸い寄せて離さない。
ぐちゅっ、と熱がこすれあい、どちらも同時に目を閉じる。

生まれて初めて、秀也とあきらは、触れ合った。




―――そしてそれが、最後だった。




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