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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

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08 ジンクスその2「枯れ葉のしおり」 -1-



そして唐突にジンクスは訪れた。


「んぁ?枯れ葉がはさまってた」
聖書わざわざ外に持ち出した奴がいるのかよ、と、ぶつぶつ言いながら顔を上げ・・・健は固まった。


幸也もみなとも、微妙な顔でこちらを見ている。


ものすごく覚えがあるパターンだった。

まさか。



「・・・これは、何かのジンクスか」
はさまっていた枯れ葉をつまみながら問うと、みなとが真顔でため息をついた。
「ビンゴだよ。ザッツ・グレイトだよ。短期間でよくぞって感じ。藤原くんに幸あれ」
「いや、そういう感想はいいから教えろよ。なんだこれは。俺どんな呪いがかけられたんだ」
健が苛立ちながら枯れ葉をペイっと捨てる。
みなとは演技がかったしぐさで、十字を切った。
答えたのは幸也だ。
「ジンクスその2、聖書に枯れ葉がはさまっていた生徒は・・・失恋する」
「待て待て待て。うすうす気づいていたが、やたら恋愛がらみって、女子校かここ!アホな年頃女子のつどいかここ!薄気味悪ぃ!ぶっちゃけ、毛のはえそろった大の男の話題じゃねえよな!!」


「藤原、静かになさい」

教師の咳ばらいが、礼拝堂に響いた。


健はその日から、礼拝時間『毛』と絶叫した伝説のバカ生徒として語り継がれることとなる。




「失恋プラス変態の烙印をおされる、新たなジンクスになりそうだな」
「木谷まじうるせぇ」
べっこべこな精神的へこみ方をしている健に、めずらしく幸也があれこれ話しかけるのは、完全に面白がっている証左だ。
「失恋とかまじジンクスでも気が滅入る」
「失恋のアテでもあるの?」
みなとのツッコミは大抵遠慮がなく、きつい。
いま寮の談話室には、たまたまこの3人しかおらず、これじゃあ部屋にいる時と変わらないな、と健は周囲を見渡した。
各個人の部屋にテレビはなく、寮ごとにもうけられた談話室に申し訳程度1台補給されるのみだ。
チャンネル権は上級生からカースト制度で展開される。
高校一年生の自分が占拠できる奇跡の瞬間、これ幸いと何か面白いチャンネルを見ようとするのだが、ワイドショーの時間帯とぶつかってしまってどれもこれも食指が動かない。
結局テレビはBGMよろしく、ポテトチップスを回し食いしながらのおしゃべりタイムになる。
本当はみなとも幸也も部活動があるはずだが、さりげなく健を励ますつもりなのか、それをダシにサボりたいだけなのか、ただの気分なのか、みずくさくて照れくさいので確認はしないが、今日はこうして一緒にいてくれることがちょっと嬉しいのも事実だ。
何せ朝の礼拝時間に、全校生徒の前でスペクタル級の恥をさらした直後。
せまい学校のこと、噂は広まるべくして広まり、放課後にもなれば廊下を歩くのもトイレに行くのも笑い物にされる苦痛がつづきまくった。
もともと部活動はまだ決めていない健は、暇を幸いに引きこもろうとしたが、励ますように両脇をがっちり固め、ガードしてくれたのは、この二人だ。
なんだかんだいって、このルームメイトたちは面倒見がいい。
異質な全寮制男子校、ということを忘れるくらい、健はこの学校になじみ始めた。
・・・が、いまだに慣れないのは例のジンクスだ。
「アテっつーか、失恋したらリアルに困る。俺、彼女いるし」
「何にん?」
「一人だ!」
みなとの謎な質問にコンマ2秒で返答する。
「複数とか、ただれてるぞその発想!」
「えぇぇでもユキは先週4人に更新してたよ。僕は知ってる」
「まじでか!木谷のキは鬼畜のキか!」
「・・・藤原、最近みなとに影響されすぎだ」
ぴ、とチャンネルを回しながら、幸也は取り合おうともしない。
「先週もちゃんと地元帰ってデートしたんだけどよぉー。やっぱ中坊の時と違って毎日会えないのもつらいって言われてさ」
中学2年のときから続いている、人生で初めてできた彼女だ。
けしてモテる部類ではない自分にしては、かなり勿体ないレベルでイイ彼女ができて、健の人生は順風満帆となるところだった。
「へぇ。写メとかないの?見せて見せて」
みなとが身を乗り出し、健はあわてて携帯の入っているあたり(制服のケツポケット)を手で押さえた。
「ぜってぇ見せねえ!なんかぜってー余計なこと言うだろ!」
「偏見だよぉ。それともなに?藤原くんの彼女って人に見せられないほどアレなの?」
「アレってなんだ!超かわいいっつの!」
そんな下らないやり取りをしているうち、談話室の扉が開いた。
なんとなく3人一斉にそちらを注目し、入ってきた人物を驚かせてしまったようだ。
「あ・・・」
小さな声は、侵入者のもの。
見れば、先日顔と名前を覚えたばかりの人物だった。
「キラくん、部活は?」
気軽に話しかけたのはみなとで、健は前情報で微妙な気まずさをおぼえる。

吉良正則(きら まさのり)。中学3年生。
あの子、ユキが好きなんだ。

みなとの言葉は本当かわからないが、入ってきた吉良の表情を見れば、事実だったと納得する。
きっとこの部屋に幸也がいることなど、想定していなかったのだろう。
怯えたような、でも嬉しそうな、怖がるような、まるでしゃぼん玉のように微妙に光の入り混じった揺らぐ表情だった。
そして視線はじっと幸也に注がれている。
当の本人はしれっとチャンネルを回し続けているのが、もどかしい。
「えと、そ、の」
頭がうまく回らないのだろう、顔なじみのはずのみなとに対してすら、しどろもどろになっている。
相手から逃げるようにその目線がさまよい、ぴたっと健で止まった。
「あ」
また、思わずと言った風に吉良が声を漏らす。
その視線を受けて、みなとが健を振りかえり、ああ、と微笑した。
「この人、僕らのルームメイトの藤原くん。今朝の礼拝でなんとねぇ」
「わあー!わあー!言わんでいいっつの!!」
『毛』騒動を暴露されそうになり、慌てて大声をあげた健に、吉良は怯えた目で半歩下がってしまった。
完全に変な先輩だと思われたようだ。
「ちげえ!いや、ちがわないけど、ちがうから!」
反射的に弁解しようとし、何に対しての誤解をどう解こうとしているのか見失う。
健も冷静ではなかったようだ。
だが、その一連の会話を見ていた吉良が、意を決したように発した言葉は。
「あ、あの、藤原先輩、少しお時間良いですか?」
予想外だった。
「え、俺?」
木谷ではなく?という言葉を、寸でのところで飲みこむ。
面識はなかったし、委員会もかぶっていない。
接点はないし、向こうがこちらを知っていたとは思えない。
なのに、彼は健を指名した。

腑におちないながらも、断る理由はないので、ルームメイトに目で合図しながら外へ出ようと吉良を促した。

なぜか幸也とは、一度も目が合わなかった。

理由は分からないが、彼は徹底的にこの後輩を無視しようとしているらしかった。



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