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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

10 ジンクスその2「枯れ葉のしおり」 -4-

自分の気持ちなのに、自分で見失うって、そんなことあるか?

自分にそう突っ込む。

そもそも恋ってなんだ。
女子にいだく感情だけを恋と言っていいなら、このもやっとしたこれは何だ。

答えは、出ない。




「藤原くん、さっきからユキを見つめすぎ。やめなよ。ユキが禿げるよ」
「なんだと。藤原、俺に何かうらみでもあるのか」
立て続けに投げられた言葉でわれに返り、その内容が脳に到達、条件反射で焦った。
気づかぬうちに、ずっと幸也を凝視していたらしい。
心当たりがあるから、余計に焦る。
「えっまじ、無意識だったごめん」
「あんまりにも熱い視線で、ユキの後頭部が焦げるかと思った」
未然に阻止できてよかった、と、心底そんなこと思ってなさそうな口調で、みなとが解説の補足をする。
そろそろ消灯をするか、という、手持ちぶさたなこの時間帯は、いつもならまったりできる最高の時間でもあったのだが、今宵はちがう。
いろいろなことを考えてるうちに、ルームメイトのつむじを、焦がれるように見てしまっていたらしい。

 ――あの子、ユキが好きなんだ

原因は、あの言葉だ。
「なぁ、この2か月ちょいで、俺は2つのジンクスとやらに当たったわけだよな」
健の確認に、めくっていた教科書から顔を上げたみなとが、『何を今さら』という顔で振り返った。
「発動した?」
「・・・わかんねぇ」
少なくとも、誰かに言い寄られたり、ラブレターをもらう事態にはなっていない。
むしろ、生徒会長の件といい、みなとのモテぶりがハンパなくて怖い。
木谷も・・・と思いかけて、胸の奥にいやな黒い色が広がる。
「失恋もしてねーし」
と言ってるそばから、彼女からのライン。
かわいらしいウサギのキャラが、さみしい、と、これまたかわいく言ってるスタンプだ。
ほらみろ、俺まだ両想い。
・・・な、はずだ。
 俺も、と。
スタンプに短い言葉を返しながら、まるでそれは自分に言い聞かせているようだと思いいたる。
「入学して早々ナンだけど、早く無事卒業してぇわ。まじで」
「あぁ、そうだね」
再び教科書に目をむけながら、みなとが相槌を打つ。
「っていうか、藤原くんはそのままでいてほしいかな」
要領をえない言葉に、ん?と首をかしげた。
「変なのは内部生だけで十分。染まらずに卒業してほしいよ」
そう、内部生たるみなとから言われると、どう返事していいのかわからない。
「でも、本当に不思議だよな。ジンクスって、高校だけじゃなくて中等部も共通?」
「そ、学年関係ないよ。宮ノ森学園の生徒なら、全員。っていうことで、大学も院もふくまれます」
「うわぁ、制服脱いでも追いかけてくるのかジンクス」
想像したら、うんざりしてしまう。
「まぁ、大学まで行くとねぇ。寮じゃなくなるから鍵が折れるジンクスも、礼拝は任意になるから枯れ葉のしおりも、高校までかなぁ」
高校卒業したら、相当軽減されるのは事実なようだ。
「ほかの5つもか?」
ジンクスは7つある。
とすれば、のこりは5つ。
それも、この3年を乗り切れば、逃げ切ることができるのだろうか。
「んーどうだったかなぁ」
みなとは教える気がないようで、にやにやと教科書をたたんだ。
「教えろよ!」
「ユキがいいって言ったらね」
「なんでだ!?」
変なところで、決定権は幸也に委任された。
期待をこめた目で幸也を見ると、ちらりと視線をこちらによこすだけで、あとは知らん顔をはじめる。
「おい!木谷!」
「やめろ。本気で俺を禿げさす気か」
「禿げるほど見られたくねーなら、教えろ!」
「・・・すごい脅迫があったもんだね?」
言い出しっぺのみなとが、無責任に笑う。
「いいから!教えろよ!」
言うなり、わっと襲い掛かって床になぎ倒す。
頭の位置にクッションがあることを目で確認したうえでの、プロレス技だ。
「や・・・やめて、藤原くん!そこ、そんな風にしちゃイヤだってぇ」
「気色悪い声出すな!!」
思わず全力で離れた。
「油断ならねーな本当に!俺を陥れる天才すぎるぞ水守」
「ん、俺のことなら気にせず、続きをしてろ」
「いやいや木谷もわかってて言うな!のっかる所じゃねえだろそこ!」
冗談だとわかっていても、なんとなく今は過剰反応してしまう自分が、むなしい。
精神鍛錬がなっていない。
気まずさをふりきるように立ち上がると、押し倒された体制のまま、みなとがわざとらしくシナをつくった。
「藤原くん、いきなりすぎるよ・・・僕の心の準備も考えて」
「何も準備せんでいい!ちがう!くそ、この方面でからかわれると分が悪いな」
みなとのはじけるような笑い声で、何かの呪縛から解き放たれた気がした。
それは気まずさを全部飛ばす、明るい笑いだった。
「じゃあ、そろそろ寝る準備するか」
ようやく幸也が仕切り、はぁい、とみなとも返事する。
「ユキ、もしかしたら藤原くんが僕の寝込みを襲うかもしれないから、今日は一緒に寝てくれない?」
「まてーーーなんで俺にあらぬ濡れ衣きせるんだてめぇ」
力いっぱいの抗議は黙殺された。
「よしよし、怖いだろうみなと。一緒に寝てやるからな」
そういってベッドの上かけを持ちあげて見せる幸也に、さんざんからかわれた健がブチ切れた。
「だったら俺も入ってやる!」
ていっ!と、幸也のベッドにねじりこむ。
あはは、とみなとも続いた。
3人で、ぎちぎちのベッドに収まると、真ん中に位置する幸也が抗議した。
「狭い。うざい。お前ら出てけ」
「寝返りうったら、顔面ラリアートしちゃいそうだねえ」
身動きしただけで、危害をくわえかねないほどの距離感ゼロ。
「ばかばかしい、俺はさっさと寝るぞっ」
宣言し、自らの汗臭いベッドにスライディングする健を、くすくすとみなとが見送る。
「みなとも、戻れ」
いい加減悪ふざけに付き合うのもうんざりだ、と、顔に書いたまま幸也が促すと、うん、と歯切れの悪い返事が返ってきた。
そのトーンに驚いて見下ろすと、珍しく浮かない表情だ。
何かあったな、と、長年の付き合いで理解する。
「今日は本当にここで寝てくか?」
半ば冗談、残りは本気で問うと、みなとと目が合う。
「ありがとう。ユキは変に甘いよね」
感謝と余計な一言を付け加え、よいしょ、と身を起こす。
「早く寝よー。明日は体育だし」
宣言と同時に、立ち上がったみなとが電灯を消す。

「おやすみ」
「んー、お休み」
「早く寝ろ」

みなと、健、幸也の声が順番に投げかけられる。

踏み込んでいい領域と、踏み込まない方がいい領域、高校生にもなると、その辺のジャッジが複雑になってくる。
人間関係の一番のコツは、この距離感を見誤らないこと・・・それに限る。

それは冷たいことなのか、逆に温情なのか、たかだか10数年の経験からのデータでは測りきれない。

まっさきに聞こえてきたのは健の寝息で、次いでみなとも規則正しい寝息で答える。
それを聞き届けてから、幸也は深く目をつむった。










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