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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

09 嵐の中のさわがしさ

そしてそこから一回転半。


「きどさぁぁん」
情けない声で抗議する光輝を、まるっと無視しながら、木戸も北島も作業をすすめる。
「木戸、そこ数が違う」
「ああ、悪い」
職員室から借りてきた電卓をカタカタ叩きながら北島が指摘をし、集計をしながら木戸が書き留める。
「あとどのくらいだ」
「半分はいったね」
「そうか」
二人の呼吸がぴったりで、それはやはりある程度の年月が織りなす空気で、それを目の前で見せつけられた光輝は、うまれて初めて地団太というものを踏んだ。
「なんで!なんでオレが怒られるんですか!」
「・・・・・。」
「・・・・・・。」
沈黙が返る。
そして静かな空間に、かたかた、ぱらぱら、作業音だけが響きはじめた。
徹底的に、無視。






あれから、怒りの連鎖は玉突き事故を起こす。
光輝の発言により激高した北島が走り、例の灼熱の屋上へ連れていかれた木戸が「ぺらぺらとデリカシーのないことを垂れ流すという愚行を、このこぶしで思い知れ」とボディに一発キツイものをくらわされ、そこから5時限目の授業をすっとばすほどの長い間口論がはじまり、いったんは北島の溜飲は下がったものの釈然としない木戸が出した結論は「・・・もうあいつに必要以上にかまうのはやめよう」であり、北島の助言は「もういっそ無視しろ」であり、それもそうかとLINEさえ無視することとなり、結果、既読の2文字すらもらえなくなった光輝がついにじれて、3年の教室まで乗り込んできて騒いでいる。
そこで、たまたま委員会の雑務をしている木戸と北島が、向かい合って一つの机で作業をしていた。
光輝が、真似したくてもできない、いわく「ずるい、ずるすぎる」スタイルだ。
「きどさん」
「うるさい」
返事は北島だ。
「ここは3年の教室だ。いくら放課後だからって、1年が気楽に出入りしていい場所じゃない」
「きどさん!」
声からじれているのが、もどかしがっているのが、まっすぐに伝わる。
さすがに木戸も居心地が悪い。
けれども、光輝にかかわるとろくなことがない、と学んだばかりだ。
クラスメイトたちも、また変なのが始まった、と言わんばかりに苦笑して、知らん顔して教室から退散してしまった。
3人だけとなった教室で、ついに光輝が爆発する。

「やだ!」
急に、本当に幼い子供のような言葉で、光輝が叫ぶ。
「やっと近くに来られたのに、無視されるのは嫌です!」
声から察するに、泣きそうだった。
さすがに、今までのいろいろなことを考えると、木戸もこれ以上無視を続けるのは苦しくなる。

そもそも発端は、光輝の度重なる告白と、突然の口づけと、それにより混乱し悩んだ自分に、悪友からの口づけが追加され、そのことが光輝にばれてしまい、なぜかその「ばれた」ことも悪友にばれる、という、意味の分からない状況で、ああ、でもつまりは。
「・・・もとはと言え、俺のウカツさが招いたことか」
物事を悪く運んだのは、ほかでもない、己のウカツさだと自覚がある分、これ以上無言で光輝を責めるのも心が痛かった。
「そこは否めないけれどね」
北島もため息をこぼしながら肯定をしてくる。やはり、そうか、と暗澹たる気持ちで書類をめくる。
「ちがう、きどさんは悪くないです」
「そうやってなんでも妄信するのは、恋で目がくらんでいる証拠だよ。もっと冷静に物事を見なよ」
北島がいちいち絡むのも、咎めるわけにいかなくて木戸は困る。ひたすら困る。
さすがにその言葉に、かちんときたのだろう。
いままで罵られるがままだった光輝が、音を立てるように鋭い目線を、はじめて北島に向けた。
「あなただって、そうなんでしょう!?オレと同じこと、きどさんにしたくらいなのに!」

だんっ

机にこぶしが叩きつけられる。
北島のその行為に、むしろびくっとなったのは木戸だった。
「うるさい。お前みたいな子ザルと一緒にするな」
「一緒じゃないですか!」
「一緒じゃ、ない」
噛んで含めるように否定する。
「俺は、お前とは違う。お前みたいに考えなしに感情を吐き散らかして、木戸を困らせたり気持ちを押し付けたり」
「したようなものじゃないですか!」
「・・・・。」
さすがに、北島がむっとしたのを、木戸も感じた。
いたたまれない。
さっきから、目の前で自分にキスをした男が二人、いがみ合っている。
「・・・・・・なぁ、ここで聞くのもなんなんだが」
性分で、確認しないと落ち着かない。
それで数々の修羅場を招いたわけだが、それでも今このどさくさで確認したくて仕方がないことがある。
「お前たち、本当にそれは間違いなく『恋』なのか?人間としての好意の域じゃなくて?」
「はぁ!?」
「えぇ!?」
その質問に北島のほうがコンマ2秒はやく反応し、次いで光輝も驚きの声をあげた。
「何をいまさら!そんなほのぼのした感情なら、俺は悩んだり苦しんだりするものか!」
北島は憤然と言いつのる。
「俺は、少なくとも自覚してからずっと、お前の隣で友達のふりをするのがつらかった。お前が俺を友と信頼してくれているのがわかっていた分、それこそ何度も自分に問うたさ」
その結論が。
「冗談じゃない、その気持ちを疑われるくらいなら、最初からあんなことお前にしないし、打ち明ける気だってなかった」
「・・・すまん」
気持ちを疑っていたわけではないのだが、相手にとって失礼な問いかけであったのだろう。
木戸の言葉に、ばつが悪そうに北島が顔をそむける。
いつもの姿とは違う、年相応の子供のようなしぐさで、それがなんだか木戸の心をざわつかせる。
気づかなかっただけで、そんな苦しみを、隣でさせていたのだ。
「俺こそ」
短い返事だが、初めて、一連の騒ぎで北島が謝罪らしきものを示した。
仲直りの合図のようで、木戸の表情がやわらぐ。
気持ちに応えるかは別として、少なくとも彼は友であった。それは変わらない。

ほんの少し、なごんだ空気を見せる木戸と北島だったが、その空気ごとぶった切る一言が、その場にいたもう一人から発せられた。


「恋、じゃないです」



・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。



「・・・・・・はぁ?」


間抜けな声が、木戸から発せられた。

どういう、ことだ?
北島も、木戸も、一文字もたがわず同じことを思った。




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