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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

10 もう音も、聞こえない/R15


この気持ちが恋じゃなかったら。

何度、そう思っただろう。
これがただの友情で、なんの疚しさもなく隣にいられたら、どれだけ良かったか。
木戸が笑うたび、同じ表情で返せたらよかった。

けれど、木戸の声を聴くたび、心の奥で小さな鈴がふるえる。
それは鎮めようとすればするほど、大きくなっていく。
どうしても、止められなかった。
止め方を、だれかに教えてほしかった。
なかったことになど、できなかった。






元来、北島は人ととあまりなじむ方ではない。
中学2年のころにはクラスから完全孤立、いじめこそなかったけれど、それは逆に自分などいてもいなくてもいいのだと、周りの人間すべてに言われているような気分が、頭の片隅にいつもあった。
ほかに勉強くらいしかすることがなく、結果、進んだ学校で、出会った。


はじめは、なんという無神経なやつかと驚いた。
エピソードこそわすれたが、他愛のないやり取りだったと思う。
出席番号が近いだけで、特に印象がなかったやつだが、そんな無色透明な存在から、変なやつ、に印象が変わり、転じて むかつくやつ、になったりもしたが。
最後には。

―――あっちに、行けよ。

大したことじゃない、泣くほどのことではない、けれど気持ちがどうしても重くて、息もできないくらいつらくて、どうしようもない時に。

――― ああ。

そう返事はするくせに、その場から、北島の背中合わせに体育座りしながら、やたら読み込まれたくたびれた文庫本をめくる手も止めず、視線も上げず、話しかけても来ず。

それから1時間、ずっと木戸が黙ってそばにいたのは、高校1年の終わりだっただろうか。

何がきっかけかと言われれば、あの時だった。
どうして、本当にしてほしいことを、言葉にしなくてもわかってくれたのだろう。
人と交わることが億劫で、人に交われないとあきらめていた自分の隣に、何でもないことのようにいてくれた。
馬鹿にするのでも、同情でもなく、ただそこに座る場所があったから、とでも言うように。
恩を着せるのでもなく、面白がっているわけでもない。
自分を受け入れ、そして受け流してくれる存在が、こんなに胸を温めるなど、その時まで知らなかった。
朴訥で、鈍感で、無神経にすぎるくせに、人の痛みにはやたら敏感で、慰めなどしないけれど、寄り添うすべを知っている。
背中越しにじんわりと伝わったあの体温が、北島の魂の渇望を喚起した。

そこから、大切に大切に、誰にも触らせずに、温めていた想い。
それは木戸にも触らせなかった大切な想い。


それを。


おもいきり踏みにじられた気分だった。


ずっと言えなかった。
好きだと、恋をしていると、お前を独り占めしたいと、誰よりも近くにいたいのだと、お前にとって特別なものになりたいのだと、言えなかった。
それをいともやすやすと、土足で踏み込み、やってのけた小憎たらしい子ザルが。

「ふざけるな!!」
思い切り、力の限りに叫んだ。
「二度と、木戸に、近寄るな」
その怒りと本気は、木戸にも、光輝にも、たがうことなく伝わった。
「木戸、お前も。こいつに関わるな」
低く押し殺した感情が、冷たく光る眼鏡の奥に眼光となってあらわれる。
「頼むから」
「・・・・・。」
答えられずにいる木戸の腕をつかむと、反対側の手で書類ごとカバンをひったくる。
「帰るぞ」
「え、ちょ、きたじ」
「帰るんだ」
有無を言わせない言葉で、北島は下から木戸をねめ上げる。
戸口で固まっている光輝に一瞥をくれてやると、そのドアの反対側から木戸を連れて退場する。
そのまま職員室経由で書類を提出し、その形相と剣幕に何か言いたげな教師を目線で黙らせた。
こういう時の北島は、相手がだれであれ、一歩も引かない。
木戸としてはそろそろ腕を離してほしかったけれど、抗うことに意味がないことを、怒れる友の背中から悟った。
うかつなくせに、こういうところだけは、妙に聡い。


校門を出たところで「うちに、来い」と、ぶっきらぼうに告げられ、戸惑いは増したものの、結局は黙って従った。
おとなしく手を引かれる木戸に、北島もそれ以上言葉をかけない。
もくもくと歩き、徒歩圏内の自宅のドアにカギを差し込むとき、やっとその手を離した。
少しだけ冷静さを取り戻した北島は、大きくため息をついて振り返る。
木戸の、困ったような表情に、かすかな「案じ」が透けて見える。
抗ってもよかったのに、ここまでされるがままについてきたのは、激昂した自分を案じてのことだと、北島はその表情から読み取った。
こういうお人好しなところが。
あのバカで愚かなガキに付け入られたのだと思うと、目が眩むほど悔しかった。
家人の気配などないことは百も承知の我が家だ。
両親は夜まで帰ってこない。
木戸も何度か訪れたことのある家。
そこに今、初めて友人としての均衡を崩した二人が、足を踏み入れた。

――――― そのまま、帰す気などなかった。

もう、偽りの「トモダチ」なんかに、戻れなくても、よかった。


「北島」
かけられた声が、あくまで自分を案じていることに、なぜか少しだけ傷つく。
「・・・・・・・なんで、黙って、ついて来た?」
連れてきておいて、こんなバカな質問を投げかけるなど、本当にどうかしている。
そして、そんなバカげた質問に対し、
「・・・お前が、泣きそうだったから」
こんな、明後日な答えを返してくるお人好しの木戸も。
「本当に、どうかしてる」
顔は笑みをかたどったが、声が涙に震えそうなことは、北島が一番自覚していた。



「・・・んっ」
呼吸ごと奪ってやる。
全部よこせ、と、その口腔を蹂躙する。
ずっとずっと、こうしたかった。
あの子ザルが先んじて口づけをしたと聞いたとき、指先が つ、と冷えていくのを、あの日の屋上で経験した。
初めて知った。
人は真に怒りを感じると、全身の血が逆流し、頭に上った後・・・さざ波のように血が引いていくのだ。
そして引く血に奪われた体温の分、心に純粋な怒りが取り残される。
「き、たじ、」
息継ぎの合間に、名を呼ばれる。
まだ抗う余地があるなど、許さない。
「んっ・・・・・!」
力を籠めすぎることで、相手を傷つけるのではと遠慮がちに抗う腕など、まるで無視する。
口の中までむさぼり、少しずつボタンをはずしていく。
「~~~~っ」
言葉など発せないほど、荒々しく口をむさぼってやる。
ずっとずっと、こうしたかった。
「やめろ」
「いやだ」
「北島」
「いやだ、と言ってるんだ!」
そのままベッドに木戸を押し付ける。
全体重を、そこにかける。
「大切に、大切に、触らせなかったのに」
この、恋心を。
「あんな風に、踏みにじられるなんて」
「北島、それはちが」
「もう、いいんだ!!」
ばっと、涙の粒が散った。
眼鏡が、邪魔くさい。
幸い、裸眼でも相手の表情がみえるくらいには、近くに顔がある。
「お願いだから」
「・・・・。」
木戸の表情がゆがむ。
「・・・こんなことしても、北島が嫌な思いをするだけじゃないのか」
本気でこの期に及んで、北島の身を案じている大馬鹿だ。
「そんなこと、俺に決めさせてよ」
そう言って、泣き笑いのような表情で告げると、木戸の目が気まずそうに伏せられた。
こんなあさましい自分を、見ないでほしいという気持ちと、見てほしいという気持ちが、北島の指に力をこめさせる。
ぐ、と制服のベルトに手をかける。
木戸の体がびくりと震えるのを、組み敷いた体の下から感じた。

ああ、もう、戻れない。

けれど、戻りたくなどないのだ。

「北島、やめ・・・!」
それ以上は聞きたくなくて、一気にズボンを引き下ろす。
あらわになったそれを、迷うことなく口に含んだ。

「――――――っ!」

かすかに感じる男の匂いに、北島は目を閉じる。
ほしい、としか心が叫ばない。
この熱がほしい、としか、もう考えられない。
「北島、やめろ・・・!」

懇願はもう、届かないところに来てしまったのだ。

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