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rain* ~BL only~

BLオリジナル小説オンリーブログ。 やおいが生き甲斐。BLは浪漫です!!

13 あの日のお星さまをつかめるのなら

きど、たからさん。

福原光輝です。


あの言葉にどれほどの想いが詰まっていたかを、木戸は一呼吸ごとに理解した。
なんでお前は俺を知っているんだ、と言った瞬間の、光輝のあの表情の意味を、いま、知る。






「・・・っ」
その時。
胸の中にいた光輝の身を電流が走ったかのように、その背中が痙攣した。
びくり、と。
文字を充てるならそういう動きだった。
「福原?」
胸の中の少年に問う。
少しずつ、何かを恐れるように顔があげられ、木戸の視線と傷ついた眼が出会う。
信じられない、というような表情だ。それも、よくない意味での驚きの表情。
なんなんだ、と問おうとするより早く、震える声が意外な言葉をつぶやいた。
「せっけんの、におい」
何を言われたのか、音は耳に届いていたが、理解の域には達しない。
しかし光輝はさらに言葉をこぼす。
「今まで何回も抱きついたけど、こんなにおいしなかった」
ようやく。
木戸は理解をする。
そしてよみがえる。

先ほどの、痴態。

瞬間。
カッと、頬が燃える。
羞恥のために血が遡上し、首から上に朱を刷く。
そんな木戸の変化を至近距離で見た光輝の目には、驚きと、何かを悟る気配と、そして先ほどとは違う温度の涙が、ぶわりとわき上がった。

え、そこでピンとくるのか!?

しかし、先刻目の前で北島と教室を出ていき、数時間後に一人で戻ってきた木戸から、今まで決してしなかった香りがし、それがよりによってせっけんの匂いともくれば、弁解の余地はない。
言い訳など、できるはずもない。
光輝の両の目は、怖くなるくらいにぼろぼろと涙を量産するのだ。
「・・・。」
どうしたらいいのか。
木戸は途方に暮れて、しがみついてくる熱を持て余し、しばし教室の天井を仰ぐ。
その天井に黒いしみが広がっていることに、初めて気づいた。
心底どうでもいいことだが、そのしみは何のしみなのか、雨漏りなのだろうか・・・と思考を紛らわせて平静を取りもどすよう努めてみる。



「あら?あらあら・・・」
「・・・ただいま」
玄関に一人息子を出迎えに現れた母は、想定したよりも一人分多い制服がそこにあることに驚き、その人物が息子の制服を握りしめたままぼろぼろと泣いているのに重ねて驚いた。
制服からして同じ学校の生徒のようだが、いままで連れてきた息子の友人たちには該当しない顔であり、様子からして今さっき泣き始めたわけではなさそうだ。
ぼろぼろ沸き上がって膨れ上がる涙のつぶが、少年の足元にこぼれ続ける。
「お友達?」
ようやくそれだけ問うのが精一杯の母に対し、木戸は困った表情ですこし考え「後輩」と説明をする。間違ってはいない。
「まぁ。泣かせちゃったの?」
その言葉に、木戸はさらに困ったように思案するが、結局 是 と言うよりほかはない。
「そう・・・じゃあ上がってもらわなきゃね。もう遅いし、夕飯もご一緒してもらいなさい」
専業主婦でおっとりした母だが、なぜかこういう時の順応力が高いのは、女性ならではなのだろうか。
光輝は無言で泣き続けているので、しかたなく木戸が促すと、のろのろと靴を脱いでついて来た。
手はしっかりと木戸の制服をつかんだままだ。
学校からここへ来る間、バスに乗っている間も、ずっとそうだった。
結局定期券のほか、泣きっぱなしの光輝の分のバス賃も払ってやり、何のために教室に戻ったのかと一瞬財布の中身を嘆いたが、もうしょうがない。
「準備するから、それまでお部屋にいっていなさい」
あとで呼ぶわ、と母は台所に向かったので、背中を押してやりながら2階の自室に光輝を招き入れる。
本当に、教室からずっと何も話さない。
ただただ、涙をこぼしているだけだ。
バスの運転手にも、居合わせた乗客にも、けげんな顔をされてしまった。
光輝が何をどこまで悟っているのか、わからない。
何に泣いているのかも、わからない。
変な話だが、恋ではないと言ったのは光輝本人で、ならなおさら木戸がだれとどこで何をしていようと、泣く理由が思い当たらない。
たどりついた自室のベッドの上に座らせ、うつむいた視線に合わせるように自身は床からしゃがんで見上げてみる。
光輝の目はうつろで、焦点を結んでいない。
その間も水の粒はわき上がりつづけていて、どこをどうやったらそんなに涙が出るものなのか、半ばあきれた。
「福原」
答えはない。
「どうして泣いてるんだ?」
静かに問う。
答えを待っていると、やがてしゃくりあげるような細々とした声が絞り出された。
「わから、ない」
わからなくてこんなに泣けるものなのだろうか。
ようやく、腕で目を乱暴にぐしぐしとこすり、光輝は涙でガラガラになった声でつっかえつっかえ訴えた。
「わけ、わかんない。木戸さんが、好き、だけど、たぶんあの人とは違う好きで、木戸さんが、誰かに恋してても関係ない、そういう好きじゃないって、おも、思ってる、のに」
こらえていた言葉は、一気にほとばしる。
「で、でも、だけど、あの人は、おと、男だし」
あの人、とは、北島のことだろう。
「なん、でかな。あの人に、そういう意味で、木戸さんをとられるの、どうしても、やだ」
幼い物言いだ。
つたない言葉の選び方は、それだけ光輝のいつわりない心情の吐露だということを示している。
「オレ・・・絶対、やだ」
木戸は一つ、大きな深呼吸をし、まだ泣いている光輝にゆっくりと話しかける。
「小さいころ、お前がすごくなついてくれてたのは、覚えてる。最初は戸惑ったけど。途中から弟ができたみたいに、嬉しかった」
手術のための検査入院は思いのほか長く、手術におびえる幼い自分に、いつも笑いながら駆け寄ってくる光輝がすくいだったことが、ぼんやりと記憶の海から浮かび上がる。
それを丁寧に手に取るように思い出し、探し出して、話す。
「子供の時のあのまま、お前は接してくれてたんだって、今ならわかる。子供だったから、ふざけてじゃれて、キスしたことも確かにあった」
おやすみのちゅう、したことがない。みつきもしたい。ママはしてくれないんだもん。
そんな幼い物言いが、当時の木戸の照れくささを制した。
光輝もだったが、自分もたいがい幼くて、そして無邪気だった。
でも、北島のキスは、そういう意味ではないのだ。
友達だと思えてたら、こんなに苦しまなかった・・・別れ際にくぎさすように告げられた言葉の重みを、木戸なりに誠実に受け止める気だ。
「きっと、混乱してるんだろうな。ごめん。早く思い出していれば、こんな風にこじれなくて済んだのに。お前はちゃんと、思い出すのを待ってくれてたのにな」
そういって、頭に手をのばす。
なだめるように、撫でようとした。
いつもの癖で。


ばちん

光輝がその手をはたいたのだと、木戸が理解するより早く、光輝が叫ぶ。

「やだ!!」
それは悲鳴に近かった。
「木戸さんの近くに行けない理由が、『好きが違うから』とか、意味が分からない!あの頃のままじゃ、あの頃みたいなんじゃ、近づいちゃだめなら、もうそういうの、いい!」
はっきりと、木戸の目を見て光輝が叫んだ。
「好きです。好きなんです、大好きなんです。好きの種類なんて知らない、そんなのどうでもいい、あの頃からずっとずっと、木戸さんが好きで、大好きで」
そこで一度言葉を区切ってから。
「それを他人に決めつけられたりするの、やだ。それが木戸さんであっても。この好きに区別なんてつけないで。オレの気持ちはオレのものだ。誰にも触らせない。木戸さんにも、です」
光輝の涙はいつの間にか止まっていた。
「好きです。あなたのことが、大好きなんです。ずっと、ずっと」
「・・・・・。」
木戸は、黙ってうなづき、立ち上がって光輝の頭をそっと抱え込んだ。
今度は光輝も逆らわなかった。
木戸の背に、震える手を伸ばし、そっと抱き返してきた。
その身が、燃えるように熱くて、木戸は戸惑う。
全身で、全力で、木戸が好きなのだと、その熱は訴えているようだった。






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